怒る隣人

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ドンドンドン それは壁を叩くような、床を蹴るような音だった。 ぼんやりとした意識の中、時計を見ると時間は深夜を回った頃だった。 (こんな夜中に誰だよ、何考えてやがるんだ。) 俺は苛立ちながらベッドから起き上がる。 ドンドンドン 一定の間隔とテンポと音は鳴り続けた。 俺は寝ぼけた頭で思考を巡らす。 (俺の部屋は、一階の角部屋で、上の階には誰も住んでいないから、つまり隣の部屋からか、、、) 俺は隣に面する壁を睨みつける。 壁を叩いてクレームを入れる、なんてことも考えたが夜中にそんな事をするのもなんだか面倒で、俺はそのまま布団を頭まで被って寝てしまうことにした。 気づいたら、その日はそのまま眠ってしまっていた。 次の日の朝、家を出るタイミングが丁度隣人と被った。 「あ、おはようございます。」 咄嗟に挨拶をしたが、良く考えてみたら隣人と会うのはこれが初めてだった。 昨日の今日でもあったので、いったいどんな奴が住んでいるのか気になって、俺は隣人の姿をマジマジと見てしまった。 隣人はスーツ姿の40代位の男性で中肉中背。これぞサラリーマンと言った風貌だった。気になる点と言えば、目の下が真っ黒なクマで覆われていることだった。 「・・・・」 男性はそのクマが張り付いた目で俺の事を睨みつけると、挨拶は返さずに歩き出してしまった。 (なんだ、随分と礼儀知らずのおっさんだ。) しかし、あの目を見る限り、あれから一晩中部屋の何処かを殴るか蹴るかしていたに違い無い。きっと仕事でストレスを抱えているのだろう。 その時は、そんなに深く考えずに俺も会社へと出勤した。
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