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俺は、裏口に回ってみる事にした。
先輩が、和美さんを殺した。そんな事は、到底信じられるものではない。何か、嫌な予感がする。俺は、とりあえず、家の様子を探りたかった。
もしかしたら最悪、何者かに脅されているって可能性もある。ただこのまま乗り込んで行ったら、「そいつ」の思うツボかもしれない……。
俺は足音を潜め、そっと裏口に回った。
家の奥の応接間から、明かりが漏れている。
先輩は、あそこにいるのか……?
俺は身をかがめ、応接間の窓の下に忍び寄った。そして、カーテンの隙間から、そっと中を伺った。すると……。
「……!!」
その時俺の目に、信じられない光景が飛び込んで来た。
応接間のイスには、先輩が向こう向きに座っている。その背中だけが見える。そして、先輩のその「頭」は……!
その頭の部分には、およそ見たこともないような、気味の悪いものが乗っかっていた。頭の形はすでにしていなかった。何か、果実の熟したようなものから、しゅるしゅると、細長い触手のような物が何本も伸びていた。その触手一本一本が、まるで独立した生き物のように、部屋中を動き回っている……!
俺はその場で、凍りついたように固まっていた。すると。
突然、先輩の頭の部分……熟した実のようなものが、くるりと向きを変えた。それはきっちり180度回転し、こちらを向いた。部屋中を這いまわっっていた触手が、ぴたっ! と動きを止めた。
そして、頭部の“実”の部分が、ぱっくりと縦に割れた。
「!!!」
俺は、声を出さずにいるのが精一杯だった。割れた部分の縁には、びっしりと鋭い歯が並んでいた。
「XXXXXXXXXX!!!」
その割れ目から、悲鳴のような、叫び声のような、けたたましい音声が響いた。恐らくそれが、そいつの「声」なんだろう。そして、俺は……もう、「逃げ遅れている」ことに、やっとのことで気づいた。
それまで動きを止めていた触手が一斉に、俺のいる窓の外の俺めがけて、物凄い速さで伸びてきた。
「わあああっ!」
慌てて逃げようとしたが、ムダだった。
パリン! パリン!!
触手は、見た目のしなやかさとは裏腹の意外な固さで、次々と窓ガラスを突き破り、俺に襲い掛かってきた。
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