夜に、叫ぶ。

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 やがて和美さんの魂は、まばゆいばかりの光に包まれ。それは、大袈裟に言うなら。まるで……まるで、“天使”のようだった。  和美さんは仁美の魂の手をとり、ゆっくりと上昇し始めた。 「和美さん……」  和美さんは、俺の方を振り返り、微笑んだ。 『ありがとう、勇二さん。あなたのおかげよ。あなたが、私に呼びかけてくれたから……』  俺の心の中に、和美さんの声が響いた。 『お礼なんていいよ。こっちこそ、先輩を救ってくれてありがとう』  俺も心の中でつぶやいた。和美さんは、くすっと笑った。 『いつもそうね、勇二さんは。先輩、先輩って……』 「か・ず・み……」  先輩の声だ。なんとか上半身を起こし、光り輝く和美さんを見ている。 「行ってしまうのか……」 「ごめんなさい。でも、あなたのせいじゃないわ。これでいいの。ありがとう、今まで……」     一層の輝きを増し、和美さんと仁美はやがて、溶け合うようにひとつになり。俺たちの目の前から、「すうっ」と姿を消した。  そして……かすかな光の粒がひとつ、宙を舞い。  俺たちの前で、何かを惜しむように煌めいてから、音もなく静かに、空気の中に溶け込んでいった。  俺と先輩は、その光が消えた後を。いつまでもずっと、見つめ続けていた。     ―了―  Best ending! congratulations!! Best ending用「特別編」→次ページへ
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