夜に、叫ぶ。

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「西条!」  俺は階段を降りながら叫んだ。 「どうした?!」  西条が何事かと、部屋から飛び出てきた。その後に先輩も続いた。 「西条、車を用意してくれ。和美さんを、病院に運ぶ」  西条は「えっ」と言う顔をして、俺と、そして先輩の顔を見比べた。 「……どういうことだ?」  俺は怒りを押さえ、西条の問いに答えた。 「見ての通りだ……和美さんだったよ、2階に倒れていたのは……! 有り難い事に、まだ息はある。早く病院に行こう」  先輩は俺の話を聞き、また、あの殺気立った表情になった。 「勇二! 騙されるな! そいつは……和美じゃない!」  俺はもう、先輩の言葉を信じる気はなかった。 「先輩……どうして先輩がこんなことになってしまったのか、俺にはわかりません。でも、今はそんなことより、和美さんを病院に連れて行く事が先決です。先輩、せめて……邪魔をしないで下さい!」  最後の言葉には、自分でも怒気がこもっていたのがはっきりわかった。目の前で、倒れている和美さんを見て、冷静でいろって言う方がムリだ。俺は西条を促した。 「さあ、行こう。一分でも速いほうがいい」  西条はいぶかしがりながらも、俺に従った。  確かに、俺が抱きかかえているのは和美さん以外の何者でもない。これ以上、何を疑うことがある? 「西条、行くぞ!」  俺は階段を降り、玄関へと降りた。その時。 「いかせるか!」  先輩が俺の肩を、がしっと掴んだ。俺は、本気で先輩を睨み付けた。 「先輩……俺は今まで、先輩に逆らったことなんてなかった。でも、今は違います。邪魔をするなら、先輩でも許さない!」  先輩はぎらついた目で俺を睨んだ。 「“息がまだある”だと……? 勇二、今すぐそいつを離せ。さもないと……!」  先輩は、懐から「すっ」と拳銃を取り出した。 「先輩!!」  西条が叫んだ。先輩はやっぱり、普通じゃない。いや、狂っている……!  先輩は拳銃を両手で構え、俺の額に狙いを付けた。 「さあ、降ろすんだ。脅しじゃないぞ……!」 「先輩、止めてください! 勇二、お前も落ち着け!」  西条が必死に叫んだ。しかし。俺と先輩はそのままじっと睨みあったままだった。 「勇二、お前のために言ってるんだ。ここでそいつを離さないと、一生後悔するぞ!」  先輩の言葉に、俺は負けじと言い返した。 「その言葉、そのまま返しますよ! 先輩、俺を行かせないと、あなたが後悔する!」 「二人とも、止めるんだ!」  西条が、こらえきれず俺と先輩の間に割って入った。 「先輩、勇二、落ち着いて! とりあえず……救急車を呼びましょう! それで、手を打とう! 勇二、和美さんを降ろせ! 先輩も、拳銃なんかしまってください!!」  西条は必死に叫んでいる。さあ、どうする……?     俺は…… A:やはりこのまま、和美さんを病院に連れて行く。→次ページへ B:西条の言うことを聞き、和美さんを降ろす。→89ページへ      
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