夜に、叫ぶ。

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 階段の上には、さっきの、ひしゃげたザクロのようなものが。頭の部分を下にして、横たわっていた。ザクロの周りからは、俺と先輩を襲った触手が生えていた。その触手達も、しばらくはひくひくと動いていたが、やがて、その動きを止めた。ヤツは、今度こそ……息絶えた。 「先輩!」  俺は先輩を助け起こした。割れた額から、血が流れている。俺は自分のシャツを引きちぎり、先輩の頭に巻いた。 「先輩、やりました。今度こそ……今度こそ、ヤツは死にました」  先輩は、俺に向かって微笑んだ。 「どうだ、信じたか……? 俺の話を」 「はい、すいませんでした……でも、今でも信じられないですよ。こんな事……」    それから俺は、傍らに横たわる西条の亡骸に目を移した。 「西条……」  先輩は、肩を落とした。 「すまなかった、西条……こんな事に、巻き込んじまって……」 「いえ、西条を呼んだのは俺ですから。先輩が、責任を感じることはないです。俺が、一人でくればよかったんだ……」  俺は改めて後悔の念に駆られていた。なぜ一人でこなかったんだろう。なぜ、西条をこんな目に……。  そんな俺の様子を見て、先輩が声をかけてきた。 「お前こそ、自分を責めるんじゃない。全ては、俺から始まったことだ。俺は、自分で完結させるべきだった……。ヤツを殺したと思い込んだせいで。そして、それを誰かに聞いて欲しくて……」 「それで、俺に電話を……?」 「ああ、こんな途方もない話、聞いてくれるのはお前しかいないと思ってな……」  俺は改めて、先輩と……そして、西条に詫びた。 「すいませんでした……すまん……」     俺と先輩は、横たわるあのバケモノの様子を確認するため、階段を登った。もう、ピクリとも動かない。完全に息絶えたようだ。 「こいつ、いったい何者なんでしょう?」  俺は呟いた。先輩が、少し考えて答えた。 「そうだ……和美は今夜、町内の集まりがあると言っていた。これまで、滅多にそいうった催しものみたいなのはなかったんだが。それが、もしかしたら……そこで和美は……」  俺はその時想像したことに、自分で身震いした。その集まり自体が、こいつらの始めたことだとしたら。……この町自体が、すでにこいつらに支配されつつある。  先輩の表情も強張っていた。俺と同じことを考えたようだ。 「先輩……!」 「ああ……」  戦いは、始まったばかりなのかもしれない。  先輩は拳銃の残り弾を確かめると、ゆっくりと階段を降り始めた。俺はそっと、その後に続いた。  家の外は、まだ不気味なほど静まり返っている。  ついさっき銃声が響いたばかりの、この家の周囲が……!  俺と先輩は、目を合わせ合図をすると。一気に、玄関の戸を開いた。     ―了― (Little good ending)
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