夜に、叫ぶ。

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 俺は、後ろから仁美に飛びかかった。  「このやろう!」  だが仁美の方がスピードが速く、俺はかろうじてその脚をつかんだだけだった。それでも、仁美は少し体勢を崩し、突き出したナイフは先輩の身体をかすめただけで済んだ。 「ちっ!」  仁美はこちらを振り返った。 「貴様から、先にやってやる!」  あっという間に、仁美の右手が俺の目の前に来た。俺は、自分の右手を顔の前にかざすのが精一杯だった。  ぐさっ……!  俺の手の甲を、ナイフが貫いた。仁美はそのまま俺を押し倒し、ナイフが刺さったままの右手ごと、俺の顔にその切っ先を押し付けようとした。 「く、くく……」  俺は左手で、なんとか自分の右手を押さえた。仁美は俺の身体にのしかかり、全体重を俺の右手にかけようとする。右手を押さえる俺の力は、もう、尽きかけようとしていた。 「やめろ!」  その声に、仁美は「はっ」と後ろを振り返った。その顔に、先輩の“蹴り”が入った。 「ぐああっ!」  仁美はもろに蹴りをうけ、壁際にふっとんだ。 「先輩!」  叫びながら、俺は起き上がった。すると俺の鼻筋から、つー……と血が流れた。ナイフの先端が、鼻に当たっていた証拠だった。危ないところだった……!  先輩は、上半身血だらけになりながら、よろよろと起き上がった。 「仁美、おまえだけは、許さん……」  ナイフを俺の手に奪われた仁美は、素手で先輩に飛びかっていった。 「うわああっ!」  先輩は、まともに仁美の身体を受け止めた。そして、その勢いのまま、部屋の窓に激突した!!   
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