南条×小宮

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 その時だった。私の真横をビュッフェの補充に来たスタッフが通り、持っていた大きなトレイがぶつかりそうになった。かろうじてそれをよけるも、今度は慣れない高いヒールのためか、よろけて体のバランスを崩してしまう。 「小宮さん、危ない」 「ひゃっ!」  肩を抱いて支えてくれたのは、私の王子様……ではなく旦那様。南条さんが、咄嗟にスマートにエレガントに助けてくれたのだ。 「大丈夫ですか?」 「はい……」  私は年甲斐もなく頬を赤らめ、間近にある南条さんの顔を見上げてコクコク頷いた。すると、南条さんは私の肩を抱いたまま、ひそひそ声で耳打ちをする。 「あとで、ふたりで座りましょう。立ちっぱなしでいろんな方々と話して、疲れていると思うので」 「は……はい」  体を離されたあとも、その優しさにうっとりする。素敵です。……私の旦那様、本当に素敵です。 「……あれ?」  目の前で、変な声が聞こえた。梅原ちゃんの声だ。私はハッとして、姿勢を正す。そうだ、梅原ちゃんに早く伝えなければ。 「仲良しで何よりだな。そういや、おふたりさん、子どもは何人ほど予定しているんだ?」 「うぶっ!」
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