南条×小宮

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「ん? あれ? 知りたがるから電話でちゃんと言ったじゃねーか。おい、南条。梅原が信じられないんだと。小宮さんにキスのひとつやふたつしてやって、証明してみたらどうだ?」 「堤課長!」  大赤面で慌てた私は、堤課長に向けて必死に首を横に振る。なに言い出すんだ、このおじさんは。 「…………」  けれど、南条さんは横の私をじっと見下ろした。視線を感じた私は、おそるおそる南条さんの顔を見る。見つめ合うと空気が止まった気がして、私の心臓は早鐘を打ちはじめた。  もしや……もしかして……こんなに人に見られてる前で、し、しちゃいますの? あぁ、でも……こんなに麗しいお顔を前に、わたくし、断れますでしょうか。いや、断れな……。 「やはり、見世物ではないので、むやみにはできかねます。あとでふたりきりのときにします」  けれど、さらっとそう言って顔を前に戻した南条さん。私はちょっと拍子抜けしたものの、ホッと胸を撫で下ろす。 そして、堤課長がぶーぶー言っているなか、梅原ちゃんが、 「う……う……うそだぁ!」  と、遅れたリアクションの大声を夜空の下に響かせた。
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