羽島×菜乃香

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羽島×菜乃香

 レストランとガーデンを繋ぐ緑のアーチ。そこを抜けると、ちょうど羽島さんがこちらへ歩いてくるところだった。 「羽島さんもお手洗いですか?」 「いや、すぐそこにチェアがあったから、座ろうと思って」  羽島さんが指差したアーチの横を見ると、ひとり掛けラタンチェアが二脚と、小さな丸テーブルがあった。近くにさりげなくライトアップされた噴水があり、壁伝いに水が流れている。 「座る?」 「はい」  もうすぐお開きの時間だろう。けっこう夜も更けてきて、初夏とはいえ風も肌寒くなってきた。私はバッグに入れていたストールを肩にかけ、羽島さんの隣に座る。 「幸せそうで、なによりですね。おふたり」 「そうだな。ていうか、あのふたりが好き合ってるって、最初信じられなかったけどな」  遠く、小宮さんと南条さんがソファーで話しているところを眺める。失礼ながら私も最初は信じがたかったけれど、今では本当にお似合いのおふたりだ。 「交際に至るまでには、いろいろあったんだろうなと思います」 「俺らみたいに?」  頬杖をついてこちらをちらりと見た羽島さんに、私はふっと鼻で笑って遠い目をする。 「なんだよ、その目は」 「いえ」
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