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ビュッフェテーブルのところまで来ると、遅れてきた辻森さんが声をかけてきた。
「参ったよ、休みだっていうのに、出る直前に取引先のシステムトラブルで呼ばれて」
「お疲れ様です。今、乾杯したところですよ」
スタッフからグラスを受け取った辻森さんは、頷きながら俺の斜めうしろを見る。
「あれ? もしかして、こちら、時峰の?」
「あぁ、初めてでしたね。紹介します、妻です。この人は、会社の上司の辻森さん。いつもお世話になってる上司」
「はじめまして、辻森です。よろしくお願いします。お綺麗ですね、奥さん」
「お上手ですね。はじめまして。いつも主人が大変お世話になっております」
先生が辻森さんと話しているのは、変な感じだ。先生の仕事柄、その忙しさと時間の合わなさで、うちの会社関係の人間に紹介したことなどないからだ。
「ていうか、辻森さん、よく出席しようと思いましたね。傷心じゃないんですか?」
「おい、奥さんの前で何を言うんだ。それに、あのふたりが交際始めてから、もう1年半近く経っているんだぞ? 今さらだろ」
「ハハ、そういやそうですね」
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