羽島×菜乃香

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「なんで南条を見ながらため息ついてるんだ?」 「小宮さんを見ながらです。小宮さんロスというか……」  私の言葉に、羽島さんは「あぁ」と頷く。 「まぁ、わからなくもないな。あの人、人間空気清浄機みたいなところあるから」 「ふふ、なんですかそれ」  噴水を照らす青と緑のライト。それが混ざり合ってエメラルドグリーンになり、揺れる水面に乱反射している。小さな水音に、ピアノの音楽、そして響いてくるみんなの笑い声が、ほろ酔いの耳にちょうどいい。 「ていうか、そのシュシュつけてきたんだ?」  しばらくゆったりとしたこの空気に浸っていると、羽島さんが私のうなじを眺めながら口を開いた。 「はい。服と同系色だったので」  私はシュシュに手をあて、整えながら答える。まだ髪は短いから、結ぶとウサギのシッポほどだ。 「似合ってる」 「……どうも」  素直にありがとうと言えばいいのに、私はいまだに可愛くない返しをしてしまう。それがわかっているからか、羽島さんはふっと笑った。
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