羽島×菜乃香

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 このシュシュをもらったのは……ちゃんと想いを伝え合って少ししてからだった。今でもありありと思い出せる。大人になってからの羽島さんとは初めてのデートらしいデートで、映画館に行った後だった。 『これ、カナへの誕生日プレゼントで十年前に買ってたやつ』 『えっ!』  映画館の近くの落ち着いたカフェ。羽島さんは、小さめの紙袋の中からシュシュとネックレスを取り出し、テーブルの上に置いた。 『ネックレスのほうは、ちょっとくすんでたから、一応店できれいにしてもらった。まぁ、あの頃はあんまりお金持ってなかったから、安物だけど。それで、シュシュは……』 『ネックレス、可愛い……。シュシュも、この色好きかも。私の好み、けっこうわかってるんだ……羽島さん』  両方を手に取り、感激しながら交互に見ていると、 『……おい』  と、さっきまでとは違う、低い声が聞こえた。顔を上げると、腕組みをした羽島さんが眉間にシワを寄せている。 『え?』 『まさか、覚えてない? 一緒に買い物に行った時、こっちがいいって言ってたこと』 『……ん?』
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