羽島×菜乃香

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 そんなことがあったような、なかったような……。あぁ、買い物に行ったのって、あのゲーセンに行った時と同じだよね。そういえば、そんなやりとりが……。 『あぁー……あったかも。色までは覚えてないけど……ハハ』 『もういいよ。10年も前のことだし』  羽島さんはそう言いながらも、わかりやすくうなだれる。そして、これみよがしに大きなため息をついた。 『なんだよ、この負けた感は。俺が女々しいみたいじゃないか』 『ふふ。ずっと持ってたんだから、思い出が褪せなかっただけじゃ……て、それ自体が女々しいのか』 『言うな、アホ』  睨んでくるその顔が可愛く見えて、私はまた『ハハハ』と笑った。  過去の答え合わせをしてからというもの、いちいち高校生だったころの羽島さんの気持ちが伝わってきて嬉しい。今の私の奥の奥のほうにまで浸透してきて、昔の私にも届いている気がする。報われたかのような幸福感が、時間差でじわじわと私を満たしていく。 『そういえば、ヤゴとカッチンに昨日会ったんだろ? 報告したわけ? 俺らのこと』
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