羽島×菜乃香

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 飲んでいたコーヒーをソーサーに戻した羽島さんは、ちらりと私を見て聞いてきた。そう、昨日はふたりと約束があったから、羽島さんとのデートを一日ずらしたのだった。 『言ったけど……散々な言われようだった、羽島さんが』 『……まぁ、そうだろうな』  羽島さんは苦い顔をして頬杖をつき、窓の外を見る。  昨日はふたりに全部話し、『なんだ、その真相』だの『言葉が足りなさすぎる』だの『兄夫婦から慰謝料もらえ』だの、すごかった。私の心以上に騒ぎ立てて、思い出すとちょっと笑えてくる。 『でも、最後に“よかったな”って頭撫でられた』 『その口調は、ヤゴのほうか?』 『うん』 『へぇ……頭撫でられたと。あいつに』  頬杖をついたまま、視線だけこちらへ寄こす羽島さん。ヤゴが私の誕生日のときに家の前で邪魔したことを、まだ根に持っているのだろうか。 『そりゃ、高校からずっと友情で繋がってるんだから、心配してくれてたんでしょ。そのくらいいいじゃない』 『“ずっと”……か。すごいな』 『なに?』 『いや』
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