羽島×菜乃香

8/13
前へ
/42ページ
次へ
『でも、それをしなくていい場所がどこにもないって気付きはじめたとき、羽島さんに再会して……。正直いっぱいいっぱいだったのかもしれない。だから、らしくなく取り乱したり、反応したり。今となってみれば子どもっぽいけど……』  再会してからの様々な出来事を思い出す。波のなかった……いや、ないことにしてきた感情が顔を出し、ダメだと思っても制御できなくなって、最後には溢れてしまったこと。  羽島さんは、ちょっと真面目なトーンになってしまった私をしたり顔で笑い、 『らしくないとか、子どもっぽいとかじゃなくて、もともとの素直なカナが顔を出したんだろ?』  と言った。  重くなりかけた空気がふわりと軽くなり、そのせいか、私は照れ隠しで口を尖らせる。 『どうせ、今の私は素直さ全開じゃないですよ』 『今のカナを否定しているわけじゃないだろ。昔の自分に嫉妬するな』 『嫉妬って。そんなのしてないし』  ホント、今の羽島さんて、何でも見透かしているような態度だし、ふてぶてしくて困る。再会してから、ずっとそうだ。 『俺は、今のカナのそういう多少のひねくれも可愛いし好きだよ』
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5249人が本棚に入れています
本棚に追加