羽島×菜乃香

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 ほら、こういうことを臆面もなく言えるところも、小憎たらしい。 『…………』 『ハハ、久しぶりに見た。そのふくれっ面』 「なに笑ってるの? 思い出し笑い?」  羽島さんの声にハッとして、噴水の水音が耳に戻ってくる。 「いえ、なんでもないです」  私は、シュシュに触れたままだった手を戻し、にぎわっているテーブルに目を移した。古賀さんと小宮さんの妹さんが、また言い合いをしている。初対面であれだけ言いたいことを言えるなんて、逆に相性がいいんじゃないかとさえ思える。 「小宮さんの妹さん、明るくて、正直で、とても可愛いですね」 「そーね、昔の誰かさんみたい。髪も長いし」  私が見ている同じ方向を見て、羽島さんは微笑んだ。そして、私の反応を確かめるようにこちらへと目を移す。面白くない気持ちが顔に出ていたのだろうか、羽島さんは失礼にも小さく噴きだして、そっと私のシュシュから出た短い髪に触れた。 「髪、伸ばすの?」 「どうするかは私の気分次第です」 「さすが」
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