第5話 親子

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「……わかりました。ありがとうございます」  我ながら言ってて不思議というか、何に対してお礼を言ったんだろうって思ったけど、静子さんは静かに微笑み返してくれるだけだった。  今度こそ静子さんと別れた私は、着替えを取りに自分の部屋に戻った。  親思う心にまさる親心。  そんなことを考えながら、私は湯船に浸かった。  今の私は親元を離れているけれど、両親は今頃どう思ってるんだろう。  ここに越してきた初日に実家に連絡したけれど、それ以来、私は全然親のことを考えていなかった。  お風呂から出たら、家に電話でもしてみようかな。  何を話すでもないけど、元気にしていることくらいは伝えたい。  そんなことを考えながら、改めて今日一日を振り返った。  今日は本当に、たくさん学びのある一日だった。  実際に陸くんに勉強を教えたのはほんのちょっとだし、私のほうがきっと、多くのことを学ばせてもらっている。  これからも私は、ここでいろいろなことを学んで、少しでも立派な人になれればいいなと、そんなことを思った。
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