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「きれいだね」
私が水をまいていると、作業を終えたらしい四季さんが、私の後ろでそう言った。
きれいなのはもちろん私じゃなくて、リナリアの花たちだ。
「この花にしてよかったです」
「そうだね。色合いが、他の花ともあってるっていうか、映えてていいよね」
このリナリアは、私がここに来たときにたまたま空いていたスペースに植えさせてもらったものだ。
私は植物には全然詳しくないけれど、園芸店に行ったときに、見た目のかわいらしさが気に入ったのと、名前に縁を感じて、その場で買ってしまった。
それをここに植えて以来、私は水まきをお手伝いするようになった。
細かな手入れは四季さんがやってくれているから、私はただ水をあげて愛でるだけ。
「さ、朝ごはんにしようか」
「そうですね。今日はみなさんいらっしゃるんでしょうか」
「どうだろう。誰も外に出てないから、起きてればリビングにいるはずだね」
このアパートには、各自の住まいにあたる部屋が一つずつあるけれど、そこはあくまでも家の一部で、私を含め住民は、実際には共有スペースにいることのほうが多い。
これから向かうリビングには台所もあって、特に用事がなければ、みんな自然とそこに集まって食事をとることになる。
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