第5話 親子

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「おはようございます」 「あぁ、おはよう。莉亜、今日もごくろうさん」  そう言って私を迎えてくれたのは、このアパートでは最年長になる、(くら)じいこと倉澤(くらさわ)哲夫(てつお)さんだ。  二年前まで学校の先生をしていて、定年退職をした今はここでのんびり過ごしているとのこと。  とても気のいい人で、この人に商店街を案内してもらったこともある。 「おはよう、莉亜ちゃん。すぐに朝食でいいかしら?」 「あ、はい。いつもありがとうございます」  そう言って台所から声をかけてくれたのは、ここでは料理当番になっている佐伯(さえき)静子さん。  近所の商店街にあるお弁当屋さんでパートをしていて、料理がとても上手だ。  倉じいと一緒で、日々の暮らしに関していろいろとサポートしてもらっている。 「おはよう……兄ちゃん、姉ちゃん」 「(りく)、お箸とか出して目を覚ましなさい」 「ふぁい……」  陸と呼ばれたこの子は、静子さんのお子さんで、現在中学三年生。  普段は活発で礼儀正しく、陸上部に所属していて、力仕事をよくしてくれる。  今は起き抜けだからか、動きに精彩を欠いているけど、これはこれで子どもらしくていいと思う。
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