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第5話 親子
私が「勿忘荘」に住むようになって、二週間が経った。
ここでの暮らしにもすっかり慣れて、毎日を楽しく過ごしている。
私は洗濯当番になったから、私の一日はお洗濯から始まるようになった。
私が洗濯物を干してリビングに向かうと、だいたいいつも、静子さんが朝食を用意してくれている。お世話になりっぱなしで申し訳ないけれど、これがもはや習慣となった。
そして朝食の前に、私が習慣にしつつあることがもう一つある。
それが、中庭にあるお花の水やりだ。
「莉亜さん、おはよう」
私が中庭に入ると、すでに水やりを開始していた四季さんに声をかけられた。
この人がこのアパートの大家さんで、名前は鹿嶋四季さん。
ここに来たばかりの私をいろいろ気遣ってくれている。
普段から中庭の手入れをしている四季さんは、私が初めてここに来た日に、このアパートの名前の由来である「勿忘草」の話をしてくれた。
そのお話がとても素敵で、そのときからここは私のお気に入りの場所の一つになっている。
「おはようございます」
「そっちの花壇、水まきしてもらっていいかな」
「はい。やります」
四季さんはあえて、花壇の一角の水まきをしないでくれている。
理由は簡単で、そこには私が植えたリナリアの花があるからだ。
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