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女を抱いていると江滝はなぜか、安堵する。一度もあった事のない女のくせに。
いままでずっと、共に生きてきたような懐かしさを覚えるのである。
「もちろんよ……、心配しないで」
そう言って女は優しく江滝の唇を啄み、長い舌を出して江滝の口の中を掻きまわす。江滝もそれに応えながら、腰を振るのだ。一撃、一撃、腰を打ち付ける度に女が喜ぶ。
「ああ、ああ、もっと、もっとちょうだい……、もっと、精をちょうだい」
身悶えて江滝にしがみついて、まだ、精をねだる。
酔っているのか。
妄執なのか。
それは解らなかったが、なぜか江滝は女のしぐさにが陽来の面影があることに気が付く。笑う前の微妙な空気感であるとか、ねえ……、と物をねだる時の喋り方。それでも江滝はこの女が陽来であるなど、思いもよらなかった。
まさか。
みだらに男を誘い、股を広げて性器が入っている所を見せつけながら男の上に乗って、自分で腰を振るような事をするはずがないではないか。
その女は実に楽しく、江滝に抱かれている。
「私を……離さないでね」
女は夢うつつの江滝の耳元で囁く。もちろんだ、と江滝が応える。
「すきよ、すき……うそ。きらいよ、あんたなんて……」
「きらいなのに、抱かれるのか」
「そう、きらいだから、抱かれるの」
そう、言って女はまた、江滝に激しく抱くようにせがむのだ。
美龍公の心に白い蛇が棲みついた。
最近の街のもっぱらの噂はこれである。噂になっていた四肢のない女が江滝に気に入られ寵愛を受けているそうだ。
「いつも膝に乗せているそうだよ」
「黒い髪であったはずなのに、白い髪になっていたらしいな。不思議な事だ」
「言いぐさからして不思議じゃないか。魔物に手足を奪われた、なんて」
「それが妙に思えぬほど、美しいらしい。十七、八の娘なのに、艶めかしく、男を誘うのだそうだ」
その女は睡蓮と名付けられて江滝に愛されている。
四六時中、いつも恋人のように片時も離れず、時間があれば体を繋げる。心がいつも休まらず不健全な生活をしていた江滝であったが、睡蓮といると不思議と気分が落ち着いた。自分が生きている世界の全て、権力のなにか、薄暗い欲望、そんなものはどうでもよくなった。あぐらをかいて、その上に睡蓮を乗せる。四肢がない睡蓮に江滝自ら茘枝(ライチ)などを剥いて口の中に入れてやると、果物の汁がついた江滝の指さえくちゅくちゅ、と音を立ててしゃぶる。貪欲、と言ってからかってやると怒ったように顔を背ける睡蓮に「では、ここはどうかな……」と言いながら戯れに剥いた茘枝の実を睡蓮の秘部に一つ、二つ。くぷり、と白い実が消えていく。身悶える女の痴態を楽しみながら、もう一つ、二つ。そうすると甘えたように睡蓮が懇願する。
「ヤダ……取って、取ってえ……」
「いいだろう、私がお前のあそこに口をつけるから、産んでごらん」
「意地悪しないでえ」
「意地悪ではないよ、あんまりお前が可愛いから……お前の蜜が飲みたくなった」
そう言い。膝に乗せていた睡蓮を床に寝かせて少しも躊躇せずに江滝は睡蓮の秘部に口をつけて、舌を入れる。そうすると、とろり、と愛液が流れるのを江滝はすくって飲んだ。
なぜか、睡蓮の愛液は花の香、桃の味がした。それは芳醇でいて、刺激が強い。舌に乗せると、頭が痺れる。強い薬を飲んだようになる。
「ああ……、お腹に入ってる……う……ん」
「そら、出して……」
舌と指で女の中を優しく掻いてやると、女の腹がひく、ひく、と蠢いて肉の壁から白い果実が一つ顔を出す。生暖かくなったそれを江滝はなんの躊躇いもなく口に入れて、種を吐き捨ててから果実を押しつぶすと甘い味が広がる、それをまた、唾液と共に女の中に、垂らす。それを何回か繰り返してすべての果実の汁を睡蓮の中に入れてしまうと、じゅるる、と力強く、吸った。
「ああ……江滝様」
女が自分の名前を呼ぶと、嬉しくなる。だから奉仕をする。甘い、汁を吸う。頭がおかしくなる。その汁を分かち合おうと女の口に近づいて、口づけをすると、女は自ら口をあけて待ち構える。みだら、いんらん。そんな言葉しか出てこない。だから江滝はなにも言わない。ただ、折角きちんと着込んだ衣、それも、ほんの四半時前に行為を終えてもう致すまいと着込んだ衣を簡単に脱ぎ捨てて、また女を犯すだけだ。
「睡蓮、俺の精を取りつくす気か」
「ふふふ……それだけじゃ、いや」
「他になにがほしい」
「そうね……全部。あんたの全部。ねえ、あたしのこと、好き?」
「好きだ」
「じゃああたしの為に死ねる?」
「もちろんだとも」
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