江家の嫁

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「なんてことだ、なげかわしい。あの紅花は便利な小間使いだったのに……。代わりに娶った女は手足がない、おかげで飯の支度も洗濯も誰もしてはくれないじゃないか!しかも千人に抱かれる、だって?なんておぞましい女と結婚したんだ我が息子は!ねえ、あんた」 「ああ……私が……ずっとつらい仕事をしていたのは……江滝……お前の為だったのに……どうして……」 「ええい、後できっと追い出してやるからね」 そんなことを言っている間に沢山の男が列をなす場所へ江滝が睡蓮を抱きかかえてやってきた。 睡蓮は全裸であった。艶めかしい若い肢体を隠すこともなく。男達のよこしまな視線を受け止めた。江滝がそんな妻を抱きかかえながら、平然と言った。 「皆さん、我が妻の為にお集まりいただきありがとう。どうか、存分に抱いてやってほしい。ただ、妻は千人の精しかいらぬのだ。気に入らない男、品物があれば迷いなく断るからそのつもりでいてくれたまえ」 それを聞いて慌てたのは生半可な思いで雑草やらそこいらのがらくたやらを持ってきて半笑いでやってきていた男達である。 女は美しかった。 おぞましいほどの美しさだった。 四肢がないことが、また誘うのだ。 普通に生きていたのでは絶対に触れる事はおろか、肢体を拝むことも叶わぬ程の美貌である。 その女がにっ、と笑って愛想を振りまき、見惚れる男達にこう言った。 「あたし……、あたしに精を、生をちょうだい、いっぱい、いっぱい注いでえ……」 甘い声、美しい女、自分の手にある物は果たしてその女が満足するものなのだろうか? 男達はハッと我に返り己の女に対する貢ぎ物のはしたなさに顔を赤くして慌てて家に帰る。 本当に自分が大事だと思っている物を取りに帰るのだ。 そして最初に女を抱いたのは愚直に自分の大事な物を腕に抱えていた純朴な青年だった。 彼に関して言えば、女は優しく彼に口づけて、それからそっ、と囁いた。 「他の女になさいな。あたしなんかより、もっと最初に出会う女はいるわ」 すると純朴な青年は照れたように笑い、こう言った。 「あなたがいいんです。あなたがどんなひとでも。あなたを抱けるのならば、もう、悔いはない」 その答えを聞いて睡蓮はふふふ、と笑った。 「ありがとう。ならば、良いでしょう。うん、と抱いておくれ」
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