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「二の剣」
一の剣が愚かな弟に優しく諭す。
「私達は。染に住む者共は。みんな天帝の持ち物なのだよ……?【天帝ここに在り】の最初の三行を諳んじてごらん……」
この地に、天帝在り。
彼はこの地を統べる唯一なり。
この地の全ては彼であり、全ての物は彼の物である。
それを思い出し、目を見開く愚かな弟に優秀な兄は言った。
「我々は、天帝の玩具だ。天界から、下界にいる染の大地に住まう全ての者共は。天帝の玩具なのだよ……。だから、お前がそうやって憤る事が、間違いなのだ」
「離せ、離せ……!」
陽来がもぞもぞと天帝の腕の中で蠢く、ふふふ、と笑う天帝。
その内ぴたり、と陽来が動きを止めた。
そして、言った。
「は……。破滅して」
そう言いながらがぶり、と陽来は天帝の首にかぶりつく。がしり、と天帝に食らいついた陽来の歯に、赤い血が染まる。
だが、天帝は「おお……」と嬉し気に笑った。
「なんとしたことか。お前は我にも怨みを向けてくれる……心地良いな……なんと強い心なのか……ああ……枕にしておくのももったいない……お前は……ああ……お前を想うと我の、芯が久方ぶりに熱くなってきたぞ……」
そう言うと、天帝は陽来を少し抱え直し。手足無く、長く揺れる衣の中、腰、性器、尻の穴。陽来のそのあたりを無遠慮にまさぐり、とうとう尻の穴に指を入れた。そしてまた、歓んだ。
「おお、黄金蟲を入れているのか。なんと……二の剣は良い仕事をしてくれたな……」
そう言って、天帝は器用に陽来の尻の穴を、己の下半身の部位にあてがった。
天帝の、性器は誰にも見えない。ただ、ずるる、ずん、と何かが肥大し、大きく膨れ上がり、それが陽来の尻の穴に侵入はいってくる。腹一杯、挿入ってくる。黄金蟲が入っている陽来の尻の穴は、伸縮するが、中は別だ。大きい何かが圧迫している、そして、ゆさゆさと天帝が陽来を揺さぶるたびに、陽来の頭がおかしくなるくらいに、快くなった。
「うう……うう!」
白目をむきながら、陽来はそれでも天帝の首から噛みついて離れようとしなかった。もし、ここで抵抗しなければ。天界に連れて行かれるのは必至であったからだ。
(たとえ殺されても。もう紅花の元で死にたい。もう離れたくない。俺は、何の為にここまでやってきたのだ。全ては、愛する妻、紅花を取り戻すためだ……!滅びよ。天帝、滅びよ。俺を連れて行くと言うのなら……呪って……呪ってやる……)
そういう思いでぎぎぎ、と噛みついていると、天帝が囁いた。
「ああ……お前の心は、心地よいな……、心地よすぎて……達しそうだ……」
「な」
「そら、我の子種を受け取るがいい」
そう言うなり、陽来の尻の中の、何かわからない圧迫感が、弾けた。
「おお……、見よ。天帝が何百年ぶりに、交わられたばかりか、精をお放ちになったぞ……!」
「めでたや、めでたや」
「なんとまあ、めでたいことか」
異変にめざとい蟲爺が、天帝の行為に気が付いて喜びの声をあげると、牛王、馬王。やんやと喝采した。
「なにか、生まれる?」
糸目の女の子が蟲爺に聞くと、蟲爺はうん、うんと頷いた。
「ああ、もちろんだとも。天帝の精を受け止めるなど……陽来という男、本当に幸福者であるの……」
その、幸福者は。
天帝を殺さんとばかりに喉に歯を突き立てた後、尻の中から湧いた衝撃に気絶していた。だらり、と力が抜けた陽来の白髪を優しく天帝が撫でてやっていると、どこからか小さな声が聞こえる。どこからだ、と天帝が再び陽来の頭に手を置いた時、かぷり、とその手が誰かに噛まれた。その方向を見れば。
陽来の頭に女の可愛い唇が生えていた。
「ふふふ。破滅して……」
そう言って、唇が妖しく笑う。天帝は目を細めながらその口に手を近づけると、あーん、とばかりに大きく、開いた。
そこへ天帝が親指以外の指を差し込み、がしり、と掴むと一気にずるり、と陽来の頭から、何か、大きなものを引きずり出した。それは女だった。女の体だった。全裸の女が、陽来の頭から、ずぼり、と出てきた。
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