3 絶望

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 それから数日間は、わたしは家の片づけや、警察やマスコミへの対応でずっと忙しかった。もちろん警察やマスコミには、わたしが変身して戦った事実はふせてごまかした。バーバリアンからもどった人々も、わたしにやられた前後の記憶はあいまいになっていたため、ばれなかった。  しかしわたしは弟たちや両親には、わたしとププとやつらについて、きちんとすべてを話した。時間は少しかかったものの、なんとかみんな信じてくれた。家族の意識は変わり、のうのうと生活してはいられなくなったが、自分たちで自分たちの身を守るためには、しかたがない。  わたしはその間にも、町を見回って、人知れずバーバリアンを浄化していった。やつらはかげで人をおそうだけでなく、わたしの時と同じように、もはや大っぴらに活動もしていた。やつらがその気になれば、やはりほとんどの人がその同族になったし、一度わたしが浄化した人間が、ふたたびバーバリアン化することもしばしばだった。  そうして間もなく、やつらの存在は世間にも知られていき、メディアや国会でも取りざたされるようになった。同じ現象は、欧米など、世界各地で見られるようだった。  が、愚かな人々はどこまでも愚かで、それを利用しようとする人非人も後を絶たない。いや、そもそも彼らは、バーバリアンの予備軍なのだ。有効な対策など打たれるはずもなく、バーバリアンは全国、全世界で目に見えて増え続けた。 「……ププ」  世界が変わり果ててもう久しくなったある日、ある夕暮れ。わたしはつぶやくように言った。 「……どうしたんだい、あかり」 「……夕日がきれいだな、と思って」 「……そうだね……」  それっきり、わたしたちは何も言わなかった。別にわたしは、日はまた上るとか、人間にはまだ一筋の希望があるとか、そういうことを言いたかったわけでは全然ない。  明けない夜がないなんて、いったいだれが心の底から確信を持って言えるだろう。  未来は暗い。幼稚な人間は後を絶たない。野蛮な時代は、すでに来ている。負け戦なのは分かっている。  だけど、それでもわたしは、戦いを続ける。この、胸の内の絶望と共に。
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