1 脅威

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 木枯らしが吹き始め、短い秋にも終わりがやってきた、十一月の日。その放課後のことだった。  例によってクラスの女の子たちの間からは、帰りにチェーンのカフェに寄っていこうみたいな会話が聞こえてきていた。わたしにはおさそいの声はかからなくなっているけれど、もうおたがい特に気にしてなかった。  わたしはいつもと同じように、一人で校門を出た。団体行動自体がいやだから、部活はやってない。この町は片いなかだし、小さいころに本屋すらなくなってしまったから、まっすぐ家まで帰るだけだ。夕方の通学路を歩きながら、わたしは何気なく、こんなことを考えていた。 (……わたしもコーヒー、飲みたくなってきたな。……わたし「も」って、みんながカフェで飲んでいるのは、やたらと甘い変なやつかもしれないけど……)  チェーン店のは飲む気がしないけど、ちゃんとしたコーヒーなら、わたしは好きだ。おばあちゃんによく連れていってもらった、童話の家みたいなすてきな喫茶店の、香ばしくてやさしい、深い味わいのコーヒーは大好きだった。  けど、おばあちゃんは三年前に亡くなってしまったし、そのすてきな喫茶店も、残念ながらもう潰れてしまった。 (……帰ったら、自分でいれようっと。お気に入りのカップで……。だけど期末試験も近いし、あんまりゆっくりはしてられない。一杯飲んだら、すぐ勉強しなきゃ……)  そんな風に、わたしが気を取り直して考えていた時だった。通学路の途中にある空き地の片すみに、小さめの段ボール箱が落ちていたのだ。開封済みのネット通販の箱で、汚れたり潰れたりは、ほとんどしていない。わたしはみるみる不快になった。 (どうして、こんな物が道ばたに? うっかり落とすような物じゃあない。決まってる……。だれかが品物を引き取った後で、箱を放り捨てたんだ……! 後のことなんか何も考えずに!)  わたしはそんな風に腹を立てながら、箱へと近づいていった。そのまま置いておいて、ゴミが消えてなくなるわけじゃない。だれかが片づけるまで、ゴミは捨てられたままなんだから。 (……うんざりだけど、わたしはもう家に帰るだけ。持って帰って、資源ゴミの日にいっしょに出そう)  けれどもわたしがそう思って間近まで行くと、箱の中に何か入っているのが見えた。 「あっ!」  わたしは思わず声を上げて、立ちつくしてしまった。箱の中入っていたのは、クリーム色で、小さくて、ふわふわと毛の生えたもの……。つまり、動物。捨てられたペットだった。
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