1.小学生時代~読書感想文が苦手だった私とその解決法~

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1.小学生時代~読書感想文が苦手だった私とその解決法~

 小さい頃から、何かを「想像」したり、それを「文章」にするのが好きな子どもだったのは覚えている。  初めて書いた小説(今でいうと「まがい」のようなものではあるが)は、小学校1年生の頃だった。もう内容はうっすらとしか覚えていないが、くまの店長さんが森でお店を開いてショーケース(これは子供のころ覚えたての単語で是非使いたかったのを覚えている)にたくさんの食べ物を並べてもてなす…という内容だったと思う。覚えたてのひらがなでこれまた学校で配られたばかりの原稿用紙に文字を書き込んでいくのがとにかく楽しかったのだ。ちょっとした小説家気分にでもなっていたのかもしれない。家族もそんな私の姿をみて楽しそうだったのも覚えている。  となると、次にこういったことに対し家族が思うことは「この子はたぶん本を一杯読んで、読書好きになるのだろうなあ」だったのだろうが、私はそうはならなかった。 私は今思うと「読書」が苦手だったからだ。  私が「読書」が苦手だと自覚するようになったのは夏休みの宿題に読書感想文が課される学年になった小学校5~6年ごろだったと思う。もともと勉強が好きで、課されるドリルや日誌なんかは比較的苦も無くこなすことができた。自由研究なども悩んだが、一度やりだすと意外と楽しくなっていた。  だが、最後まで残ったのがこの読書感想文である。ただ、お気に入りの一冊を読んで原稿用紙にその感想をまとめる。その行為だけなのだが、私はギリギリまでやりだせなかった。原稿用紙に物語を書くことは嫌いではなかったはずなのに。いや、それ以前の問題だった。私は感想を書く本(物語)が見つけられなかったのだ。  人が物語を読むと登場人物に感情移入して、嬉しくなったり悲しくなったりすると思われる。私も幼い頃から絵本や漫画、テレビを見てそういう体験をしてきた。だが、読書ではそういう感情が呼び起されなかった。書かれている「事実」とだけでしか認識できず、うまく登場人物に感情移入できなかったのだ。  最初は家族も「漫画ばっかり読んでないでもっと本を読みなさい。(今思うと、本当に漫画に出てくるお母さんの典型セリフだった)」と私を叱咤した。そして当時人間関係のトラブルが私に多発していたのを心配した故か「本を読めば相手の感情が分かるようになるから」といって半ば無理矢理本を読ませようと躍起になっていた。しかし、小説を読むのにあからさまに嫌な顔をしていた私を見続けたせいか、次第に何も差し出さなくなった。  一方、私の下の弟は逆に本をたくさん読んでいた。そしてペラペラと感想を軽い感じで述べていた。当時彼の読んでいた本は「ドリトル先生」シリーズ、「ズッコケ三人組」シリーズ、「エルマーのぼうけん」シリーズだった。ズッコケ三人組に関しては漫画のような挿絵がついていたので「これなら私でも読めるかも」と思って一度手に取って読んだ。(確かタイトルは「ズッコケ三人組の未来報告」だったような気がする。今、検索をかけたら合っていたのでほっとした)ただ、読んだだけで感想は出てこなかった。感情移入が上手くできなかったのである。あとこういったシリーズ物は読むとどんどん続きが読みたくなってシリーズそのものにはまるパターンもあると思うが、私はそうはならなかった。好みの問題もあるかもしれないが、そもそも「読むこと」に苦痛を感じていたからだと思う。  (ちなみにこのズッコケ三人組シリーズ、後にNHKで実写ドラマ化されてそれは見れるときにたまにちらちらと見ていて結構面白かったのを覚えている。同時期にやっていた双子探偵とのコラボ番組もあって楽しかった。)  閑話休題。  そんなこんなで、夏休み残り一週間を切っても、本が見つからないし分からない。お小遣いでドラえもんの読書感想文攻略漫画を買ったりもしてみたが、それでも読みたい本は見つからない。そんな思考が堂々巡りになっていた私の救世主となった本が「エッセイ本」だった。  当時、母親が何気なく図書館で借りてきて読んでいたさくらももこ著の「もものかんづめ」を何気なく読んだら、世界が広がったのを感じた。「これだ!これが読むという感覚なんだ!」という意識が芽生えた。そう、私は「物語を読む」のが苦手で「あった事実が書かれたエッセイだったら読めた」のである。  私は急いで本屋に駆け込み、当時発売されたばかりの「ももこの話」で急場をしのいだのを覚えている。そもそも漫画やアニメとして「ちびまる子ちゃん」や「コジコジ」は好きだったし、文章を読んでいるとキートン山田さんのナレーション声で本が読めたので、頭で「アニメを妄想」しながら楽しめたのだ。本当にさくらももこさんには感謝しかない。  今、本屋に行くと、ほとんどの本に子供の頃の私のように映像か漫画しか読めない子を引き付けるためか、まるで漫画のような絵の児童書が並んでいるのに驚く。(ちなみにその中でジョジョの奇妙な冒険の実写映画版のノベライズもあってびっくりした。子供が読んでいいのかあれ…)「私の時代にもああいうのがあったら違ったのかな」と思うが、だからと言ってこうやって自分自身を振り返ると「それでも読めなかったのだろうなあ」と思う今日この頃である。
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