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「……ごめん。」
暫くして泣き止んだ唯乃は言った。
「いえ。お姉ちゃんと、知り合いだったんですか? 何かお墓に話してたみたいだったけど?」
「うううん。」
と唯乃は首を横に振り答えて
「真美ちゃん、2人だけの秘密にしてくれる? 真美ちゃんにしか言えないんだ?」
改まって言った。
「え?」
と真美は驚いたが
「お願い秘密にするって約束して! ずっと、誰にも言わないって!! お願い!!」
と縋る唯乃を見て
真美は訳も分からずに目を白黒させたが、少し考え
「——分かりましたっ!?」
と返事をした。
そう言わないと唯乃が納得しないと思い言った。
唯乃は少し離れ
「いい? 行くよっ!?」
と、ちょっと強い口調で言った。
「はいっ!」
良く分からないが、真美も釣られて同じようなテンションでそう答えた。
「じゃあ、行くねっ!」
唯乃はスカートを捲る。
その行為に、なんだ!? と真美は驚いたがが
「……ッ!?」
自分の目に入って来た物に絶句した。
唯乃がスカートを捲って見せた、下に履く短パンから覗く太腿に、見覚えのある沢山の出来物があった。
「……それって…ッ!?」
絞り出すような声で真美は言った。
あの病室で見た。——あれだ。
この瞬間、今までの唯乃が自分を見た時の反応の意味を理解した。
「お姉ちゃんが、尊君のお姉ちゃんの所にも——!?」
「え? ……うん。」
「……。」
「ごめん。誰にも相談出来なくて、真美ちゃんなら言わないでくれると思って。誰にも言わないで」
「はい。病院には?」
「行ってないよ。致死率100%だもん。行く意味がない。家族や尊が偏見の目で見られるのも嫌だし」
「でも、いずれは……。」
真美は口籠るが、言わなくとも分かる。
いずれ重症化して亡くなれば、当然死因は世間に分かってしまう。
「……。」
唯乃は何も答え無かった。
真美には完全に発症する前に、唯乃が自ら命を絶つ気なのが分かった。
家族に迷惑を掛けない様に死ぬ気なのだ。
「ねえ? なんで鈴香先輩は、此処に私を呼んだんだのかな? なんか真美ちゃん分かる?」
「……すみません。何も」
「そうか……。さっき鈴香先輩が私の所にもって言ったけど、真美ちゃんの所にも来るの?」
「いえ、今は」
「今は?」
「少し前までは、たまにに見えたんですけど。今は、もう——」
「そうなんだ。どうして、鈴香先輩は見え無くなったの? なんか理由ある?」
「——理由」
真美は自分や尊を救ってくれた、あの2人組の事を思い出す。
「あっ! そうだ! もしかしたら、助かるかもしれない!!」
「え?」
「実は私声が出せない時期があって、ある人達に救って貰ったんです! 実はあの森で尊君を救ったのも、その2人で——」
「えっ!? 尊も? それって誰?」
「確か探偵だって。ただ、私は連絡先を知らなくて、前にテントを黒田川に張ってたんですけど、もう帰ったみたいです」
「探偵? そのテントって——。黒田高校の側の?」
探偵という言葉にも、思い出せないが何か引っ掛かる。
「はい! 橋の少し上流に。尊君が名刺貰ったらしいんですけど、無くしちゃったって。雑誌に記事書いてて、その雑誌が——。なんて言ったかな? ルー?」
「え? あっ! 名刺!? ——もしかしてっ!!」
唯乃は探偵の何に引っ掛かっていたか分かった。
制服のスカートのポケットに手を突っ込む。
「まだあった! これかっ!?」
唯乃がポケットから出したのは、皺くちゃになった1枚の名刺だった。
名刺には——
『怪異探偵 波久礼銀太』
の文字が。
「それです! その人ですっ!!」
真美は興奮して言った。
「そうだ。玄関で拾ったんだ!! 尊が門限破りした、あの時——。あの時に、その2人に会ってたのか」
「門限破り? ——多分そうです! 私を家まで送ってくれたから、それで」
「あいつ全然話さないから。くそっ! カッコつけやがって——。でもこれで、救われるかもっ!! ありがとう、真美ちゃん!!」
唯乃はもう一度真美に抱きついた。
「いえ、私は何も——」
寺を出てから、真美と分かれると直ぐにその場で、波久礼という探偵に電話してみたが
「この電話は、現在電源が入っていないか電波の届かない所に——」
とアナウンスが流れ繋がらなかった。
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