一 致

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 一 致

私は昔から、性に―――セックスに興味があった。 彼氏である先輩に「他の男とも、愉しんでみない?」と言われても、怒りも哀しみも湧かなかった。 「漆原(うるしばら)さんって、同じでしょう? 俺と」 初めて飲み会で話したとき、先輩は私にこう言った。 血色がよく、アルコールで濡れた唇から吐き出された言葉。 (たの)しそうに狂った眼を向けられ、私は身震いした。 ―――この人なら、きっと愉しませてくれる。 先輩と私は飲み会を飛び出し(・・・・)、ホテルへ向かった。 抜け出すなんて、そんな品のいいことは出来なかった。 初めての人だからといって、私はその人に入れ込んでしまうような、そんな可愛い人間じゃない。 ただセックスをしてみたかった。 それがどんなものか知りたかった。 ―――初めての相手は、慣れている人がいい。 ずっと、そう思っていた。 もちろんそれは、遊び慣れている、なんて意味ではない。 いい意味で、慣れている人という意味だ。 先輩は適任だった。 清潔感がある。 経験がある程度ありそうだけれど、決して誰彼構わずではない。 きちんと避妊をする。 馬鹿ではない。 ―――そんな風に見えたから。 重過ぎず、軽過ぎず。 きっと、ちょうどいい相手だろうと。
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