一 致

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噛むように唇を重ね、乱暴に服を脱がせる。 下唇には先輩の歯があたり、しばらくじんじんと(しび)れた。 先輩が来るなんて思わなかったから、着けていたのは二軍の下着。 薄暗い夕方ならまだしも、今はまだ昼過ぎ。 せっかくのお愉しみなのに、これでは集中出来ない。 葬式にTシャツに参列するようなものだ。 そう思ったけれど、そんな心配は無用だった。 下着は見られることもなく、あっという間に剥ぎ取られていく。 先輩は、一言もしゃべらない。 たまに湿っぽい息が漏れるだけで、私の声だけが狭いアパートの中で響く。 いつもなら「いい?」とか、「ここは?」とか聞くのに。 もちろんそれは盛り上げるためであって、先輩は私がどこをどうされるといいのかはわかっている。 私の手首や腰を掴む力は、跡が残りそうなくらい強い。 腰はいいけれど、手首はまずい。 私のバイト先の制服は半袖だ。 断ったことをそんなに怒ってる? そんなに早く愉しみたかった? どうして先輩がこんなに怒っているのか、よくわからない。 そんな先輩に、私の躰はいつもより反応した。 壁が薄いことも忘れ、気が付けば無我夢中になっていた。 さっきまで兄がいた部屋。 そう思うと背徳感みたいなものも込み上げ、更に興奮した。 シーツも、枕も。 お互いの汗やら何やらで湿り、ぐっしょりと冷たく、重くなっていった。
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