〜プロローグ〜

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まあおそらく知り合いも多少“盛ってる”んだろうけど、そうだとしても、202号室のお爺さんが物音にうるさいのは間違いないだろう。 そんな生活に嫌気がさすのか、みな1年も経たずに302号室を出て行くことになる。 そんな302号室には、3月まで若い男性のサラリーマンが住んでいたけど、その男性もちょうど1年で出て行った。 急な転勤とかじゃなければ、お爺さんの攻撃に耐えかねて…の引っ越しだろう。 202号室のお爺さんも、廊下で会ったらいい人なんだけどなあ。 キリンマークの引っ越し業者さんが荷物を降ろし始めるのと平行して、アパートの入り口やエレベーター、廊下に青い養生シートを張り始めた。 僕の部屋の前の廊下でも養生をする物音がし、そして隣の302号室のドアが開けられる音が聞こえてきた。 やっぱり隣の部屋に引っ越してくるみたいだ。 ーーーどんな人が越してくるんだろう? こうなれば、気になるのは隣の住人になる人のこと。 比較的大きな町に住んでいるので、ご多分に漏れずアパート等に住む住人同士の関係性は希薄とはいえ、地方の郊外の片田舎出身の僕としては、それでもできれば仲良くできることに越したことはない。 心や過去に傷のある人ならまだしも、体に非合法的なやりとりで付いたホンモノの傷のある人だったりすると、穏やかに生活できなくなるかもしれない。 何しろ僕は大学5年生。今年こそちゃんと卒業しなきゃいけない。 しかも大学入学までに2年ほど遠回りしているので、今年もう25歳になる。 ありがたいことにコンビニで酒を買う際に年確で未成年と疑われるほどには童顔なので、そんなに大回りな学生生活を送っているように見えないのだけは助かってるんだけど。 どんな人が入居するのか、引っ越し作業を見ていたい気もあるけど、そんなのぞき見的なことをし続けるわけにもいかない。 母親からの荷物を受け取った後、お昼前には塾の講師のアルバイトにいかなきゃいけない。 ーーーまあ、“いい人”なら、いずれ挨拶に来るでしょ。お隣同士になるんだし。 僕はそう思い直し、ベランダから部屋に戻った。
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