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簡単な身支度の後で、ソリスティアに転移するアデライードをシウリンは見送る。
太陽はすでに高く、乾いた風が夏草の茂る草原を吹き抜ける中、巨大な環状列石の中に、二人立っていた。
「大丈夫、必ず辿りつくから。僕の帰るべき場所は君のところだけだから。待っていて。アデライード」
シウリンの言葉に涙をこらえてアデライードは頷き、白い、魔法陣を呼び出す。
エールライヒを肩に止まらせて、シウリンは転移に巻き込まれないように、巨石の近くまで下がって、勇気づけるように微笑んだ。
やがて光の粒子が魔法陣から立ち上り、眩い光の波にかき消されるように、アデライードの姿は消えた。
遥か太古の、巨石の並ぶ環の中に、シウリンは一人残される。
ただ、黒い一羽の鷹だけが、彼の側にあった。
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