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0-1 忍び寄る闇
帝都、暁京の皇宮の東側、東宮と呼ばれる皇太子宮の奥。薄闇に覆われた豪奢な寝台の紗幕の中から、少年たちのすすり泣きが聞こえる。
魔力灯の淡い光の中に浮かび上がるのは、二人の少年の白い裸体。
「……も、やだ……いや、です……ち、ち、うえ……や、やだ……」
耐え切れずに泣き出した弟を、優しく宥めるよう背中を撫でている兄に向かって、紗幕の外側から冷酷な声が飛ぶ。
「うるさい、早く持ってこい……ユイン、お前もだ。何をしている、早く! 精が、精が足りぬのだ! この父の命がかかっておると言うに、何を躊躇うか!」
「……しかし、父上、もう、無理です……今夜これ以上は……」
紗幕の外の寝椅子に身を横たえ、絹のクッションに寄りかかった顔色の悪い中年男が、髪を振り乱して叫ぶ。白絹の単衣の上に黒絹の長衣を纏い、だがしどけなく着崩していて、この男が当然持つと期待される威厳はどこにもなかった。
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