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アルバイト
「あ゛ー……疲れたーーー」
カフェでバイトをしている私は、いつもより少し早めに休憩をとって机に伸びていた。
接客は減ったけれど、テイクアウトを始めてからは手間が増えて結局のところ週末の忙しさはさほど変わっていない。
「って、もう休憩終わり!?やばっ!」
こういう瞬間の時間が進むのは早いもので、慌ててインカムのイヤホンを耳に嵌めた。
「杉崎、あと5分で戻ります」
『おー、了解!戻ったらテイク着いてー』
「はいっ!」
大きなチェーン店ではないけれど、広いお店のココはテイクアウトのショーケースを設置してからインカムも使うようになっていた。
確かオーナーさんは、シフトは減らすしかないけど切らないし1人もテイクのお客さんを逃さないためだって言ってた気がする。
「いらっしゃいませ!」
上京したはいいけど大学がリモートになってしまったから、アパートの傍のココが唯一と言って良いほどに私が出入りして他人と直接交流できる場所になっている。
優しいオーナーさんのお店に務められているおかげで一人寂しい都会暮らしも温かなコミュニケーションをいただけていて心身共にとても助かっていると思う。
「わー、美味しそー!何にするー?」
テイクの窓に付いてすぐ、2人組のお客さんがいらした。
片方は確か……痛バッグとかいう、ぬいぐるみや缶バッジがたくさんついている装いだ。
「イベントですか?」
「はい!久しぶりに会えるんです!」
「この子すっごいファンなんですよー」
「あはは、見れば分かりますよぉ。素敵な方ですよね、こないだのドラマ見てましたよ」
「えー!嬉しいー!!!ありがとうございます!」
あははと笑い合ってオーダーのものを詰めていると、もう1人お客さんがいらした。
「あの、時間……かかりますか?」
「あ、10分ほど……」
「そうですよね、すみません」
うちはサラダを選んでもらったりメインを温め直したりと提供に少し時間がかかる、けれど”また来ます”と笑顔を返してもらえて少しホッとした。
以前にも増してピリピリとしているお客さんは多いから……最近はお断りをするのも少し怖いのだ。
「あっあの!」
「はい?」
あぁ、とても優しい方で良かった。
あれこれと作業をしている間、お客さま同士で何かお喋りをしている様子で。なんだか少しほっこりとした気分になる。
忙しいけれど、忙しくしていられる私は……こうしてお客さんのあったかさに触れられる今日は、とっても幸せなんだと最近つくづく思う。
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