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「なんで?」
「じゃあ、僕で良いだろ」
その言葉を何度言いかけて、何度飲み込んだのだろう。それじゃあ駄目だ。
誰かの代替品のような言い方をして始まって、終わりを見据えたスタートなんて嫌だ。
そんな簡単に始めてはいけないんだ。
「誰かが好きって言ったものなら信用出来る」
この言葉を初めて聞いた時、後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。つまり、物凄く痛くて、滅茶苦茶に打ちのめされた。
僕には超えられないハードルだ。
好きな人に好かれる為に他人と付き合うなんて出来ない。僕の心には、周防。お前一人しか入る場所がないのだから。
気付いてるよ、自分の気持ちが伝わってる事くらい。だから待っている。
その為なら苦手なコーヒーだって何杯だって飲み干してやる。
何人と付き合おうが気にならない。
口にはしていないけれど、そんなのただのママゴトだ。
誰の保証もない僕を相手に不安になって、悩んで。たくさん苦しんでよ。その何倍も、何十倍も、僕は君を満たしてあげるから。
※
「コーヒー追加する?」
「うん、頼むかな」
フィクションのように都合良く、視線はぴったり重ならない。
それでも二人の鼓動は、同じ早さで打っていた。
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