待ってる

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夕方、雨上がりの、帰り道。 私は綺麗に舗装された道を歩きながら、あの人の顔を思い出す。 もう会う事もないであろう人の顔を、上手に思い出す。髪も、目も、鼻も、口も。綺麗に再現されたはずなのに、その映像にみるみる霧がかかっていく。 我ながら薄情だ。でも仕方ない。バランスの取れなくなった愛情はもう不要だから。 美しい酸素を取り込むための深呼吸を一つ。 空っぽの私を埋めるように、大きく大きく吸い込んだ。
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