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パッと世界に光が戻る。見慣れないごちゃごちゃとした天井が確認できた。
シュッと人影が映る。
ドッ!
突然、頭部に鈍く強い衝撃を感じ……
……
…………?
私は今、目が覚めた。
長い時間眠っていたように感じる。全て夢だったのだろうか?
ここ、どこ?
見慣れない部屋。たくさんの乾燥した花や葉が逆さを向いてぶら下がっている。そしていくつもの蝋燭と、見慣れないブリキの人形達。
夢の中でも一瞬、見た気がする部屋だ。
ちょっと待って、どこからが夢で、どこまでが夢じゃないの? てゆうか、これは?
今見ている見慣れぬ景色が夢とは思えない。意識もハッキリしているし匂いも、手触りもリアルだ。
あれ? なんか、着ている服も見慣れない。
リンゴン!リンゴン!
突然、鐘の音が響く。一瞬戸惑ったがなにか手がかりがあるかも知れないと、鐘の音の方へ行くことにする。
寝室から続く雑多なダイニングキッチンの扉を開けると一転して厳かで静かな廊下に出た。壁や柱の凝ったレリーフと高い天井。ここは、宮殿なのかと、ますます不安になる。
しつこく鳴り響く鐘の音に導かれ、たどり着いたのは大きな観音開きの玄関扉の前だった。
来客なのだろうか?
家の主が呼び鈴を鳴らすわけが無いし、おそらくそうなんだろう。
この家とは無関係な私が出ていくのは変だろうけど、状況を突破するには行動しかないと、私は、ほとんど迷いなく扉を開いた。扉が開くやいなや目の前の客人は声を上げた。
「ああ! 良かった西の大魔女リリイッシュ様! 僕を弟子にして下さいませ!」
「は?」
と、声を発した瞬間、私は混乱した。これ、自分の声じゃない!
理解を超える情報が押し寄せて、状況を把握する所ではない!
だと言うのにさらに混乱することが起きる。客人は銀髪の可愛い少年で、私の手を強く握りしめてきた。思いがけない少年の行動にも、握られた私の手が見慣れた手ではなく見とれるほど美しい手だったことにも動揺してしまう。
「だ、だだだ、誰? てゆうか私も、誰?」
「え?」
少年が、キョトンとして手を離した反動で私は、後ろへよろける。ふと、玄関脇に設えられた大きな鏡が目に入った。
あっ!
「すみません。リリイッシュ様ではありませんでしたか? その…」
申し訳なさそうにそう言う少年を手で制し、私は言葉を返した。
「いや、リリイッシュみたいですよ」
まさかの、全部夢じゃなかったパターンね。
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