~私の家族~

1/6
前へ
/46ページ
次へ

~私の家族~

―青森県弘前市ー ゆっくりと今日と言う日を、 林檎を特産品とした地域に、 鳥たちがさえずる夜明け前。 地元の高校に通う、 朱璃(じゅり)が目覚まし代わりにしている スマホのアラームが【ピッピッピッピッ!!】と、 部屋に鳴り始める。 朱璃はスマホのアラーム音で目を覚まし、 体をグッと伸ばしながら起き上がった。 「う~ん!!」 目覚ました朱璃は乱れていたベットの布団などを直し、 空気を入れ替えするために部屋の窓を開けた。 「今日も晴れているなぁ~」 朱璃は制服に着替えた後にカバンを持て 二階の自分の部屋から一階にあるリビングまで来た。 リビングでは祖父:(まこと)(81)が、 新聞を広げて読んでいた。 「あんまり、経緯がよくないなぁ。  わぁ(わし)の葬式は、でっかく出来ないなぁ」 「お爺ちゃん、おはよう」 誠は新聞を読むのをやめ、顔を朱璃の向けた。 「朱璃、おはよう」 「にっちゃ(お兄ちゃん)はもう(リンゴ)畑に行ったの?」 朱璃は自分の席の椅子に座った。 「あぁ。今日から摘花(てきか)の作業を、  始めているって言ってじゃ~」 「そうかぁ」 朱璃は兄が用意して行った、 朝食を食べ始めた。 朱璃は朝食を食べ終えると、 家の小屋にある自転車に乗り、 通う高校へと向かった。 朱璃が通う高校までは、車でも30分もかかる場所にある。 バスもあるが、次のバスが来るのに 1時間もかかってしまう。 だが、朱璃にとって自転車で通学する事は、 苦ではなかった。 その理由には、通学の最中に 大きく広がるリンゴ畑の景色を、 眺めることが出来るからであった。 早く高校を卒業して、 あたしを高校まで育てくれた 兄たちに恩返しをしたいと思っている。 だから、あたしは子供の頃から夢だった 絵描きになる事を・・・成長して行く中で、 “兄たちを助けたい”と想う事が大きくなり 絵を描くことさぇ、いつの間にか無くなって来た。 その頃、兄:正太郎は梯子にのぼって、 自分のリンゴ畑で摘花の作業を黙々とやっていた。 そこに、つなぎの作業着を着た男性が リンゴの枝を避けながら正太郎に近づいてきた。 「よう、正太郎」 正太郎は声が聞こえたので作業を中断して、 男性の方を振り向いた。 「智也かぁ」 智也さんは兄と高校の同級生で、 高校卒業してから兄とは、 一緒にお酒を飲みに行くなどの交流がある。 智也は正太郎を見上げた。 「お前の所は、  (リンゴ)の出来はどうだ?」 正太郎は作業着の胸ポケットから、 煙草を取り出した。 「まぁ、まぁかなぁ?  あとは、収穫期までの天気次第だなぁ」 正太郎は煙草をくわえ、火を点けて吸う。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加