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「隼人・・・・?何か言った?」
隼人は顔を横に振った。
「いいや、何も言っていないぜ」
「そっか」
隼人は足止め、朱璃の後ろ姿を見つめる。
「・・・・」
朱璃は隼人と分かれ、自転車を小屋の中に片付けた。
「はぁ~・・・疲れた」
朱璃は家の玄関を開けると、
家の台所の方からいつもと違う嗅いだことが無い、
美味しそうなシチューの匂いがした。
「(あっ!?いい匂いがする!?あれ?でも・・・
兄ちゃんが作るシチューの匂いじゃない!?
何って言うかぁ・・・・なんか、懐かしい)」
とりあえず、朱璃は玄関で靴を脱ぎ、
いつものようにリビングのドアを開けた。
「お兄ちゃん~!!おじいちゃん~!!
ただいまー!!今日の晩御飯ってー・・・!!」
リビングにあるソファーには、
正太郎と誠が背筋をピーンと伸ばし、
行儀よく座っていた。
そんな2人の姿に、一歩下がって驚く朱璃。
「・・・・!?」
朱璃の事が気づく正太郎は、作り笑顔で振り向き。
「朱璃さん、おかえりなさいませ~」
正太郎のいつもと違う、様子に朱璃は混乱した。
「朱璃さん!?・・・えっ!?
おかえりなさいませ・・・!?
二人とも・・・・急にどうしの!?」
すると、台所の方からとても綺麗な女性が、
シチューが入った鍋を食卓のテーブルまで持って来た。
「あっ!朱璃ちゃん、お邪魔しています」
朱璃は綺麗な女性を見覚えあった。
その女性は・・・・大山 優子と言う名前で。
あたしが中学の時、優子さんは東京の美大生で。
優子さんが自然の絵を描くために、
青森で半年限定の下宿先を探していたところ。
正太郎の知人の紹介で、(優子さんに一目惚れした
正太郎が知人に脅して)下宿先としてうちに来たのだ。
「優子さん!?何で・・・・ここに!?」
朱璃が制服から私服に着替えた、
優子を含んだ晩御飯の食卓。
「優子さんやぁ、このシチューは美味しいわ」
「ありがとうございます」と、笑顔で返す優子。
「いや~うちの朱璃には、こんな料理が出来たら」
朱璃は正太郎・誠に対して、
凄く冷ややかな目で見つめていた。
「いやいや・・・・お兄ちゃん。
あたしが包丁を持つことさえ、
あなたは許してくれないじゃん・・・・
だから、未だに調理実習で作った事がある、
ポテトサラダしか作った事がないだけど」
「正太郎。やっぱり、女性が居る晩御飯は美味いなぁ」
朱璃は誠の言葉で、怒った顔する。
「あぁ~!!おじいちゃん。
あたしも、一応女性ですけど!!
そんなに、早く死んだおばあちゃんに会いたい?
今すぐ、手伝ってあげようか?」
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