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そんな朱璃たちの会話に、優子は思わず笑ってしまう。
「プッ・・・!!」
笑い出した優子を、朱璃たちは見つめる。
「皆さん、本当に仲がいいですねぇ。
羨ましいです」
「いやいや!!こんな会話、日常茶飯事だし!!」
優子は少し切なそうな顔で朱璃たちに見せた。
「下宿させてもらった時にも話したけど。
あたしの実家って・・・・父は有名な画家で、
母は父の絵を売るために、
世界のあちこちに飛び回る人だったから。
物心つく頃には・・・・一人で食べる事が当たり前、
家族で食事する事なって、年に数回しか無くって。
しかも、長くって・・・・大きいテーブルで、
父と母は互いの顔は見ず、黙々と食べていたわ」
朱璃と誠は、少し気まずい雰囲気を感じた。
そんな雰囲気の中で、正太郎は優子に優しく微笑んだ。
「だったら、優子さんがこの家に居る間、
思う存分に・・・・俺らの“家族”として、
食事を楽しめればいいじゃないですか?」
「・・・・えっ?」と、驚いた顔する優子。
正太郎の一言で場の雰囲気が変わり、
朱璃も優子に微笑み。
「うん。そうだよ、優子さん。
この家に来たんだから、優子さんも“家族一員”だよ」
優子は嬉しくなり、少し涙ぐむ。
「・・・・ありがとうございます」
就寝前、お風呂上りの朱璃は、
リビングをドアを開けた。
リビングでは、正太郎は縦長の窓を開けて、
星空を見上げながらビールを飲んでいた。
「お兄ちゃん」
呼ばれた正太郎は、
後ろにいる朱璃の顔を向けた。
「もう(お風呂)上がったかぁ?」
朱璃はスッと、正太郎の隣に座った。
「うん」
朱璃と正太郎の二人は、
少し沈黙しながら夜空を見つめる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「うん?」
「優子さん、何で急にこっちに来たの?
確か、うちに下宿して・・・・間もなくして、
美大をやめて。実業家になった彼氏と、
結婚したはずだよねぇ?」
正太郎は少しビールを飲む。
「大人には・・・・いろいろとあるんだよ。
疲れた心を癒すために、
懐かしい場所に来る事もあるさぁ」
正太郎が真実は語ろうとはしなかったが、
その言葉で朱璃は何か察することが出来た。
「大人って、大変だねぇ」
「・・・・あぁ。大人になると、
いろんな事が起きてくるんだよ」
朱璃は正太郎の方に顔を向けた。
「お兄ちゃん、今でも優子さんの事を好きでしょう?」
正太郎は飲んでいたビールを、ぶっはー!!と吹き出す。
「朱璃!?いつから気づいていた!?」
「優子さんが下宿しにきた時。優子さんが気を使って、
あたし達のお弁当を作ってくれたとき、
見てるこっちが恥ずかしいぐらいのお兄ちゃんが、
スキップしながら軽トラに乗ったの見た時に気づいた」と、
朱璃は苦笑いする。
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