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「お頭ぁ! 沖合に船影です!」
見張り櫓の上から、遠目の効く部下が叫んでいる。
「ほぅ! こんな昼間にか。がはは! そいつぁ随分と威勢のいいこったなぁ」
軽く笑い飛ばして、沖に目を転じる。地面の高さでは、まだその船は見えないが。
「また盗人ですかね、お頭」
別の部下がオレの脇へやってくる。
「最近、ほんとに増えやしたね。この島のお宝を奪おうと徒党を組んでやってくる……どうせ返り討ちになるてぇのに」
「は! 誰が来ようが何人来ようが一緒よ、一緒! 闇討ちだろうが昼間だろうが関係ねぇ! 来たヤツぁ、片っ端からブッ殺してやる」
今度は何人で来たのか知らんが、まったく腕が鳴るってモンだ。
「敵船は何隻だ?!」
見張り櫓を見上げて怒鳴る。
「それが……」
何やら、怪訝な声。
「見た限り、一隻だけですぜ。それも小型船で、人影はひとつだけみてぇです」
「……何だそりゃ」
陽動作戦にしても、単騎とは信じがたい。
「用心しろ! 何かあるかもしれん。船の様子は見えるか?」
この砦に単騎突入……何か、とっておきの秘密兵器でもあるというのか。
すると。
「お頭ぁ! 船の様子が見えやした! はは! こりゃ、傑作だぜ!」
見張り櫓から笑い声が降りてくる。
「どぉしたぁ?!」
聞き返すと。
「へぇ、船に乗ってるのは年端もいかねぇ若ぇヤツが一人。それに、犬と猿と雉でさぁね!」
それを聞いて、オレたちは一斉に腹を抱えて大笑いした。
「さぁ皆んな、鬼の面子に掛けて丁重に出迎えてやろうじゃぁねぇか! 何しろ今夜の飯が向こうからやって来てくれたんだからよぉ!」
完
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