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鈴山史織は少し前を歩く同じ中学校に通っている先輩、栗原颯吾(そうご)の服装を狭い隙間からチラチラと盗み見ては、その違和感を面白がっていた。 「こんな格好で道を歩いていて不審者って思われないかな?……」 史織からの視線に気づいたのか、颯吾が困ったような声で話しかけてきた。 颯吾は今、街中で王子様が着るような軍服みたいな服を着ている。それもその辺のお店で適当に買った青や赤のビビットカラーで彩られたフィクションじみたものだ。 それが怪しく思われないわけがない。イケメンが着ればそれなりに絵になるのかもしれないけど、残念ながら颯吾は全体的にトロンとした顔つきをしていて、カッコいいという部類には入らない。2人に向けられた、街行く人の訝しげな視線がその証拠である。 「わたしの顔は見えないから大丈夫でしょうけど、きっと先輩は不審者って思われてますよ。街行く人がみんなこっちをじろじろ見てますからね」 キヒヒと笑って史織が答えると、颯吾が「だよなぁ……」とがっかりしたように肩を落とした。
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