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「……失礼ですが、あなたは縁切りのご利益を本気で信じているのですか?」
改まった物言いで男性は綾代と名乗り、ガラスのような暗い眼を優香に向けた。風が翻した空色のスカートを抑え、優香は目を伏せて語り始めた。
「信じてますよ。小さい頃からオカルト好きで、占いやおまじないを信じて、流神社のことだって昔から知っていたわ。縁起が悪い、絶対に来るもんかってね」
優香は自嘲めいた笑みを浮かべた。
「けれど、周りの人たちが『迷信だ、そんなだから彼氏もできない』って言うものだから、思い切って結婚相談所に登録したの。科学的データに基づいて理想の男性とマッチングしてくれるっていうから。でもね、ものの見事に出会った男に騙されちゃって……愛情も信頼もお金も全部すっからかんになっちゃった」
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