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もう誰も信じるものか。仕事も手につかず、ふさぎ込んで空回りする日々を送っていたある日、すっかり存在を忘れた古い荷物の中から切れたミサンガが出てきた。
「ミサンガって……自然に切れると願い事が叶うっていう、あれ?」
「そう。学生時代、自分で編んだミサンガをずっとつけていたの。願いは叶ったり叶わなかったりだけど、それでも信じられたのは、臆病な自分が『行動したい』っていう勇気を後押ししてくれたからだった。それでね、もう一度だけ誰かに頼ろう、縁切り神社の神様に謝ろうと思って」
綾代は細かった目を開いて、初めて優香を直視した。おずおずとペットボトルの水を受け取り、「ありがとうございます」と頭を下げる。
こんな自分の昔話なんかで慰めになるか分からないが、綾代には受け入れられたようだった。
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