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水を飲んで一息ついた綾代は、ゆっくりと立ち上がった。完全回復というわけでないが、その眼には凛とした意志の光が灯っていた。
「俺も似たような理由で落ち込んでいて……でも、何だか君のおかげですっきりした。実は、境内の林で五寸釘の刺さった藁人形を見つけてね。女性の恨みは仕事柄慣れてはいるんだけど、危うく人嫌いになるところだった」
仕事柄……派手な人には見えないけど、ホストをしているんだろうか。一瞬考えて、優香が余計な詮索を頭から振り払ったとき、のどかな女性の声がした。
「いたいた。またこんなとこで、油売って」
地元の人だろうか。恰幅の良い壮年の女性が朗らかに笑った。
「綾代さんって……ガソリンスタンドの店員だったんですね」
疑問が解決して、優香は胸を撫でおろす。気が付くと何故か綾代が口元を手で押さえ笑っていた。さっきまで死にそうだったのに、こんなにいい笑顔になるんだ。暗雲が去って、心底ほっとした。
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