番外編:浮気発覚?大騒動の巻 2

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番外編:浮気発覚?大騒動の巻 2

翌日の仕事はミスだらけだった。見かねた同僚の津山が心配して資料作成を手伝ってくれたほど。そして仕事が終わり、二人で会社を出た。 「岡部、大丈夫か?昨日そんなに飲んでなかったのに。今日めちゃくちゃ暑いし、そのせいもあるのかな」 津山はこの不調を二日酔いのせいだと思っているようだ。 「大丈夫だよ、ありがとう。今日は早く寝るよ」 近道である歓楽街を二人ですすむ。 すると、前方からドレス姿の女性が来た。赤い、フワフワしたドレスがまるで金魚のようだ。すれ違いざまにふいにその女性と目が合った。どこかでみたような、と思ったがすぐ思い出した。その女性は【フリージア】のミズキさんだったのだ。 「あら!岡部さん」 僕に気づき、声をかける。ミズキさんは勘太さんと付き合いだしたのを知り、わざわざ無料相談所まで見にきたのだ。 津山が腕で僕を小突いて、こそっと耳打ちした。 「お前、何でキャバ嬢と知り合いなんだよ!しかもめっちゃ可愛い」 文句を言う津山に苦笑いしてると、ミズキさんがさらに近づいて来た。 「元気ないみたいだけど大丈夫?あいつと何かあったの?」 女性の洞察力は恐ろしいと言うか…。僕は首を振ったのに、ミズキさんはガシッと僕の手をとる。 「行きましょ」 「へっ」 突然ひっぱられて驚く僕と、キョトンとする津山。そんな津山にミズキさんはにっこり笑うとつかさず自分の名刺を出して渡した。 「ごめんなさい、岡部さん借ります。よかったら今度遊びに来てくださいね」 ふんわりと香水の香りがする名刺を津山は受け取りながら、その目がハートになっていた。 「ふぁい…」 ああどうやら【フリージア】の客が一人増えたようだ。 ミズキさんと一緒に来たのは勘太さんの無料相談所。中を見ると勘太さんの背中が見えた。 昨日あんなに怒らせてしまったので、顔を見ることができない。その背中がとても遠く見えてしまう。 「で、どうしたの」 「いや、あの…その…最近やけに距離が近いお客さんがいて…勘…ショウさんも楽しそうで…」 「ははん、浮気?」 そんなことは、と言いかけた時ちょうど勘太さんの正面に人影がみえた。 勘太に隠されていたその人影は紛れもなくあの小動物な男性。その男性は神妙な顔をして勘太さんと何やら話し込んでいる。 「あの人…っ」 僕が指差した方をミズキさんが見て、あっと口元を手で覆う。しばらく無言になったと思ったら…。ミズキさんは僕に背を向けた。肩が震えている。 「ミズキさん?」 「…大丈夫、岡部さんの彼氏は浮気なんかしてないわよ」 しばらくして振り返るとミズキさんは笑っていた。そして僕の手をまたとり、一緒に無料相談所に入ったのだ。 「お疲れ様ですぅ」 やだやだ!二人がいるのにっ! 驚いた顔の勘太さんと男性。そして… 「ミズキ!」 「水樹?」 二人が同時に名前を呼んだ。 その後、僕はずっと頭を下げていた。 二人が距離が近すぎるほど仲がいいとか、お客さんだとか、全部僕の勘違いだったのだ。 三橋さんはこの店、いや【フリージア】も含むグループのオーナーだったのだ。こういうお店のオーナーさんってマフィア感がありそうなのにまさかこんな小さいなんて… 「こいつといい仲だなんて、冗談でもごめんだね。こんな奴、めんどくさい」 「その言葉そっくりそのまま、お前に返すわ!三橋っ」 二人のやりとりを聞きながら、奥では小林さんが耐えきれずに声を出して笑っていた。 オーナーと従業員でありながら、呼び捨てにしてるのは二人が学生時代からの友人だから。二人で談笑してたり、距離が近かったのはそのせいだったのだ。 「岡部さん、可愛い!ショウにはもったいない」 ウフフとミズキさんが笑ってると、三橋さんがチラッと睨む。 「おい、ミズキ。お前ここで呑気にしてていいのか?もうこんな時間だぞ」 「あら!ホント!じゃあね〜」 ミズキさんが金魚のドレスをヒラヒラさせながら、店を出ていく。 「…本当に、すみませんでした」 僕がもう一度謝ると、三橋さんがもう気にするな、と苦笑していた。
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