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【4話】死(目標)に向かって
退職は簡単だった。
エネルギーもそこまで使わず退職できた。
次に旅行代理店へ向かった。
旅行先はロサンジェルス。
一度訪れてみたかった、映画の聖地。
今までの貯金を使い1週間ロサンジェルスで過ごした。
「ここがロスか」
「ここで映画が作られているんだ」
「それを見て僕は育った。」
「歩く場所全てが新鮮でとても良い」
気がついたら10km以上歩いていた。
楽しいし夢中になっている。
疲労感なんて全くない。
ハリウッド、ビバリーヒルズ、サンタモニカ、グリフィス天文台、色んな場所に行った。
目的を忘れ、ただ興奮と快楽に身を委ね時間を過ごした。
気がつけば1週間経ち日本へ帰国。
そして日常へ。
ロスへ行くまでの間、繋ぎで人生初のアルバイトをしていた。
接客業だ。
接客業自体も初めて。
自分にできるかどうか分からない、僕は馬鹿だし仕事も覚えるのに一苦労。
今まで何も成し遂げたことがない。
不安だ、、、
怒られまくったらどうしよう。
年下の子にバカにされたらどうしよう。
女の子の前で恥をかいたらどうしよう。
ネガティブ思考。
それもそのはず、今まで成功体験がなかったし努力してきたこともなかった。
自信もないし特技も人に誇れる事なんて何もない。
なんとなく乗り越えられ人生に負荷をかけず、筋肉をつけず楽をして過ごしてきた。
当然の事だ。
でもいいや、どうせ死ぬ予定だ。
どう思われようと知ったこっちゃない。
こんなことで悩んでいては死ぬ事なんてできない。
実際に働き始めた、挙動は不審、目線を合わせられない。
呂律も割らない、極度の緊張、張り詰めた神経。
でも何故だろう、、、接客する瞬間だけ流暢に話せる。
初めて接客するはずなのに。
お客さんに「ありがとう、また来ます!」と言われた。
だって仕事だろ?言われた通りの業務を行なっているだけ。
なんで感謝されるんだ?
「小川くん接客初めてでしょ?君すごいね」店長が褒めてくれた。
「小川さん頑張り屋さんですよね!無理しないでくださいね」従業員が言ってくれた。
ロスから帰ってきた時、みんなが心配してくれた。
「1人で行ったんだって?すごいね!」
「良いなぁ、私も行ってみたいけど勇気いるなぁ!」
「度胸あるね!俺は1人でいけないなー」
「羨ましいです!今度連れててってくださいよ!」
なんで褒めてくれるんだ?なんでみんな優しんだ?
お世辞なのは分かっている。
そんなに褒めないでくれ、優しくしないでくれ、、、
だってそんなことされたら生きたくなってしまう。
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