※谷の底※

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祭りの日に、免許を取ったばっかりの若い子が、山道で乗り回してたことによる事故だった。 運悪く通りかかった軽トラの運転手は軽傷だったけれど、乗用車を運転してた17,18才の子が2人死んで、あと2人、病院へ運んだけれど、一人は脊髄損傷してた。 酷い事故。 暗闇でライトを照らして、即死だったとおもわれる少年を運転席から引き出した。 今まで事故現場には立ち会ったこともあるし、死亡事故も、何回かあった。 火事も、経験はある。 だけど、今回のは、若かった。 俺も、あんなだった。 免許が取れたのが嬉しくって、男友達と車で出かけた。 東京の大学に受かってた俺は、免許はとっても車はなくって、親に借りた車でさすがに無茶苦茶なことはしなかったけど、それでも、地元に就職して自分の車のある男友達の中には山の方へ乗り回しに行っているやつもいた。 高校出たばっかりの、若い子。 そういう子がレスキューが崖を降りて、車にたどり着くころには、遺体になってた。 先に息がある子らを、救助するのに加わって、救急車が去っていく音を聞いたら、急に気が抜けて、一瞬、吐きそうになった。そこから何とか、即死だったと思われる車の前に乗ってた二人の遺体の回収をした。 事故の現場で吐きそうになるのも、初めてだった。 キツイ。 身体が重かった。 朝になって、自分の家に帰って、ベットに倒れるようにして寝た。
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