傷を舐める

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傷を舐める

お祭りの翌日、地元のニュースを検索したら、すぐに市内の山での死亡事故が出た。 若い子が二人も亡くなってる。 車が転落してるし、他の重軽傷者3名だし、大事故だ。これに龍之介は呼び出されていたに違いなかった。 昼過ぎにメッセージに返信が来て、ちょっとほっとした。 それでも、シンプルな返信に龍之介が疲れてるんだろうというのは感じられた。事故、大きかったし、本当に大丈夫だろうか。 週休日なら、ご飯、作ってあげよかな。 もうすぐ、夏休みは終わる。 そしたら、シフト制の龍之介と平日遅い私は、そんなにしょっちゅう会えなくなるだろう。 そばにいられる間に、そばにいたい。 思い立って、すぐ電話した。 ちょっと呼び出し音が長い。 「もしもし」 「龍。まだ寝てた?」 龍の声がちょっと低い。 まだ寝てたか、具合が悪い。 「んー。さっき、目は覚めたけど、うだうだしてた」 「そっか。お疲れ様。昨日、大変だった?」 「ん。山」 やっぱり、あの事故。 きっと、色々、きつかった。 「龍。今から、会いに行っていい?」 いきなり押しかけるようで、嫌がられるかもしれないし、ただ肉体的に疲れているだけなのかもしれない。 一瞬、間があって、返事に困らせたようで、言った事を後悔した。 会ったって、生と死に向き合って危険なレスキューしてきた龍之介に、私が何かできるわけでもない。 やっぱり、いいよ、と言いかけた。 「柚。俺、今、情けねえ事になってんだけど……」 「え?」 「それでも来る?」 あ。 きつくって、うだうだしてたって事かな。 「昨日、やっぱりきつかった?」 「それなりに」 「じゃ、行く。私が元気が出るご飯、作るよ」 敢えて明るく言った。 龍之介がきつい時にはそばにいたい。 ご飯位しか作れないけど。
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