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湯船の中で、私を抱きしめて、ゆっくり落ち着つくと、龍之介が、昨日の事故についてポツリポツリと話し出した。
「18くらいの子だった。……友達と、夜中に運転するの、楽しい頃だったんだろうなぁ」
「ん。そうだね」
免許取ってすぐとか。
お盆休みで、楽しかったんだろうな。
私たちが、高校を卒業して、免許を取ったばかりのころも、男の子たちが結構人の少ない山道でスピードを出したり、わいわい車で集まっていたようだった。
「そんな昔の話じゃないな、と思うとさ。な。」
「うん」
龍之介は、ちょっとやんちゃなグループとも仲が良かったから、特に。
そういう遊びに誘われたこともあったはずだ。
二人で入るともう広くない浴槽で、抱きしめられながら、この人が無事でよかったと、それだけ思った。
事故で亡くなった子のご両親や友達が今きっと何処かで泣いていて、同乗者が今、病院でどういう状態だろうかとか、一瞬でも考えでもしようものなら、心がつぶれてしまいそうだ。
私は、この、私に大事なこの人が、生きているだけで幸せだから。
それだけでいい。
「龍が無事でよかった」
「ん」
龍が後ろから、頭にキスして、腕をお腹に回して、そっと私を抱きなおした。
龍の足の間にすっぽり収まる感じが好きだ。
ただ、この人が無事でよかったと、心から思った。
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