傷を舐める

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*** 金曜日に放課後の練習を終えて、楽器を一旦、家に置くと、「今から行くよ」とメッセージして、龍之介の家に向かった。 龍之介のアパートについて、コンビニで何かいるものがあったら、買っていこうと、携帯を開いて、龍之介からのメッセージに気が付いた。 「悪い、呼び出し」 あー。 ここまで来ちゃた。 タイミング、悪い。 コンビニでどうしようか考えていたら、また龍からメッセージが入った。 「鍵、下の郵便受け」 開ける数字を簡単に説明されている。 「入ってて。大したことないから、すぐ戻れそう」 部屋に入って、龍を待つということ。 それが、当たり前の事だろうに、なんだか、気が進まない。 鍵を開けて入ってしまったら、私は一人で龍の帰りを待つのだ。 それが、理由なんかなく、妙に嫌だ。 「大丈夫」 温かいコーヒーと雑誌を買って、自分の車に戻った。 考えてみれば、二十歳の時のトラウマだ。 でも、あの事件は、理由もわかったし、今、龍を信頼してないわけじゃない。 ただ、心が、そわそわするのだ。 龍の部屋で、龍を待つというのが、妙にそわそわする。 龍の部屋に上がって、かわいらしく、ご飯でも作って待てばいいのに、それができないでいる。
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