2310人が本棚に入れています
本棚に追加
***
金曜日に放課後の練習を終えて、楽器を一旦、家に置くと、「今から行くよ」とメッセージして、龍之介の家に向かった。
龍之介のアパートについて、コンビニで何かいるものがあったら、買っていこうと、携帯を開いて、龍之介からのメッセージに気が付いた。
「悪い、呼び出し」
あー。
ここまで来ちゃた。
タイミング、悪い。
コンビニでどうしようか考えていたら、また龍からメッセージが入った。
「鍵、下の郵便受け」
開ける数字を簡単に説明されている。
「入ってて。大したことないから、すぐ戻れそう」
部屋に入って、龍を待つということ。
それが、当たり前の事だろうに、なんだか、気が進まない。
鍵を開けて入ってしまったら、私は一人で龍の帰りを待つのだ。
それが、理由なんかなく、妙に嫌だ。
「大丈夫」
温かいコーヒーと雑誌を買って、自分の車に戻った。
考えてみれば、二十歳の時のトラウマだ。
でも、あの事件は、理由もわかったし、今、龍を信頼してないわけじゃない。
ただ、心が、そわそわするのだ。
龍の部屋で、龍を待つというのが、妙にそわそわする。
龍の部屋に上がって、かわいらしく、ご飯でも作って待てばいいのに、それができないでいる。
最初のコメントを投稿しよう!